Eog滅菌 時間

医療や衛生材料業界でよく使われる「消毒」「殺菌」「滅菌」の意味の違いや、「AC(オートクレーブ)滅菌」と「EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌」の違いについて解説しています。ガーゼ商品などの「PLY」という表記についても参考ください。

Eog滅菌 時間

こんにちは。
朝日衛生材料の工場長を務めております居村です。

今回は、弊社によくお問い合わせ頂く質問の中から、いくつかをQ&A形式で解説させていただきます。

Q 消毒、殺菌、滅菌の違いとは?


よく看護師さんが業務中に使う「消毒・殺菌・滅菌」という言葉。
似ているようですが、それぞれに違う意味があります。

細菌の活動を弱める事です。
対象物に付着している病原性のある微生物を、害のない程度まで減らします。

特定の細菌を殺す事です。
対象物に付着する菌を殺す行為であり、殺す対象や程度は含まれていません。
例えば100%中10%菌を殺しても殺菌したといえる為、有効性には厳密な保障はありません。

すべての細菌を死滅させる事です。
対象物を限りなく無菌に近づけ、微生物が付着している確率を100万分の1以下にすることです。

Q AC滅菌とEOG滅菌の違いとは?


さらに滅菌の中でも大きく2つの種類があります。

AC滅菌とは、オートクレーブ滅菌(高圧蒸気滅菌)といい、適当な温度、圧力の飽和水蒸気中で加熱し微生物を滅菌する方法です。
滅菌処理に要する時間も短いですし、高温に耐えうる物体の滅菌には幅広く使われております。

EOG滅菌とは、エチレンオキサイドガスを直接流通させて微生物を滅菌する方法です。
AC滅菌と違い低温で処理出来る為、耐熱性のない物質にも対応出来ます。
滅菌処理に要する時間が大きく残存ガスの処理にも時間を要します。

こちらの画像は当社の滅菌器です。

Eog滅菌 時間

当社で製造している滅菌商品は全てEOG滅菌です。

Q ガーゼに12PLYという表記がありますがどういう意味ですか?


PLYの意味を調べると色々な意味がありますが、ガーゼに使うPLYという言葉には〝層〟という意味が使われています。

12PLYとは折りたたんだガーゼの厚みで、当社の製品であるプラスAの規格5㎝×5㎝なら5㎝幅のガーゼが12層になっているという事です。

他メーカーのものだと8PLYなど少し薄地の商品もあり、用途によって使い分けられています。

参考までに、下の画像は12PLY5㎝×7.5㎝を広げたガーゼです。

Eog滅菌 時間

5㎝×7.5㎝の折り目が12個あります。

以上、消毒、殺菌、滅菌の違いと、ガーゼのPLY表記の意味の解説でした。

他にも質問がありましたら、弊社HPのお問い合わせフォームや直接お電話でお問い合わせ下さい。
また、過去のコラムもご参考ください。

▶医療用ガーゼの種類と特徴、使用方法の解説
▶伸縮包帯、弾性包帯、弾力包帯の違いとは?包帯の種類と用途解説
▶医療用脱脂綿(カット綿)の種類と特徴、用途の解説
▶院内感染を防ぐための個人防護具の正しい着脱方法

生産部 居村 祐樹

医療機関等におけるエチレンオキサイド(以下、Eto)を用いた滅菌作業は有害作業として労働衛生管理の徹底が求められている。当センターは昨年の調査研究事業で滅菌作業時のEto曝露状況を検討した結果、長時間曝露によるリスクより滅菌終了後の機器操作に伴う短時間曝露によるリスクの方が大きいことを報告した。今年度は滅菌終了後の機器操作におけるEto高濃度曝露に影響を与える要因を詳細に検討し、Etoを用いた安全な滅菌作業を行うための基礎資料を得ることを目的とした。

調査対象及び調査方法

Etoは医療機関だけではなく、様々な職場で滅菌作業に用いられているため、調査対象には四つの病院とリネン類の滅菌作業を行っている三つの事業所を選定した。滅菌作業の中でEtoを機器に充填する作業と滅菌終了後の被滅菌物を取り出す作業に注目し、検知管(北川式検知管及びEto用チューブNo.122SD、0.1-14.0ppm、光明理化学工業)を用いた簡易な「場の測定」、個人曝露サンプラー(3M、エチレンオキサイドモニター)を用いた曝露評価、リアルタイムモニタリングによる環境モニタリング評価(ポータブルVOC連続モニタ、RAE SYSTEMS)の3種類の方法を用いてEto曝露状況を評価した。なお、エチレンオキサイドによる健康障害を予防するための許容濃度については表1に示したが、慢性の健康障害を想定した8時間曝露の許容濃度だけでなく、急性・亜急性の健康障害を想定した短時間曝露の許容濃度や天井値の許容濃度が提案されている。

表1 Etoの許容濃度について*1:Time-Weighted Values(時間加重平均値)
*2:Sshort Time Exposure Limit(10~15分程度
*3:Ceiling Value(天井値)勧告団体長時間曝露短時間曝露ACGIH1ppm(TWA *)未提案OSHA1ppm(TWA)5ppm(STEL*2)US.CDC.NIOSH0.1ppm未満(TWA)5ppm(C*3)厚生労働省1ppm(管理濃度)未提案日本産業衛生学会1ppm(許容濃度)未提案

調査結果

Eto滅菌作業における検知管を用いたA測定を実施した結果、今回の調査対象となった事業所では管理濃度(1ppm)を超えた事例は存在しなかった。また、その際の長時間および短時間における個人暴露濃度を評価した結果を表2に示したが、Etoの許容濃度(TLV-TWA、TLV-STEL)を超える事例が数例観察されたが、全体の平均値で見る限りにおいては許容濃度を超えていなかった。

表2 Eto個人暴露測定結果について長時間暴露(n=36)
0.127±0.295ppm(0.000-1.460ppm)
測定時間:439.4±56.4mins(263-513mins)短時間暴露(n=7)
0.082±0.160ppm(0.000-0.423ppm)
測定時間:11.6±3.5mins(6-15mins)

しかしながら、ポータブルVOC連続モニタを用いた環境モニタリングの結果をみると滅菌終了後の非滅菌物を取り出す作業を行う際に200ppmを超える高濃度Etoに曝露する危険性が存在することがわかった。このことは滅菌およびエアレーション終了後にも非滅菌物に残留ガスがかなり存在していることを示唆しており、エアレーション時間の設定と非滅菌物の種類や性状に影響されている可能性があるため、これらを考慮して環境モニタリング結果を評価したものを表3に示した。表3に示したCeiling Valueの値はポータブルVOC連続モニタが測定中に示した最も高い値であり、STELの値は作業時間中に作業者が曝露する可能性のある10~15分間のポータブルVOC連続モニタで示された値の平均値である。なお、この際には個人曝露サンプラーによる測定も併行して実施したが、いずれも分析下限値以下であり、性格にSTELの評価は出来なかった。

表3 Eto短時間曝露に影響を与える要因の検討測定値エアレーション時間滅菌装置と非滅菌物Ceiling Value200ppm6時間小型、チューブ類200ppm↑6時間小型、リネン類120ppm6時間小型、チューブ類87ppm12時間小型、チューブ類22ppm24時間小型、リネン類10ppm24時間小型、チューブ類2ppm24時間小型、チューブ類45ppm18時間+1日放置小型、リネン類10ppm24時間小型、リネン類STEL10ppm6時間小型、チューブ類9ppm6時間小型、チューブ類8ppm12時間小型、チューブ類2ppm24時間小型、チューブ類

考察

今回の調査対象として協力して頂いた事業所はいずれも法規通りの安全衛生活動を実施しており、問題を指摘されてこなかった。また、今回の調査結果からはEto検知管を用いたA測定や個人曝露測定結果でもおおよそEto高濃度曝露につながる危険性は見出せなかった。しかしながら、最近のEto災害事例の特徴でもある急性・亜急性中毒事例を考慮して短時間曝露の危険性を検討した結果、エアレーション時間が12時間未満である場合や非滅菌物がチューブ類やリネン類のようにEtoガスが残留する可能性が高い場合には、米国の勧告団体が提唱する5ppmの許容濃度を超えるケースが観察された。

従って事業所では法規によって要求される作業環境測定の評価を過信することなく、日常的に行われる滅菌作業では次の留意点を考慮すべきである。

  1. Eto滅菌装置のメンテナンス(配管接合部のリークの有無を含む)を怠らない
  2. エアレーション時間の設定は24時間が望ましい、
  3. 緊急時などで24時間未満に非滅菌物を取り出す必要がある場合にはドアを開けてから最低30分から1時間は近寄らない、
  4. 非滅菌物を取り出す際には防毒マスク、アイゴーグル、手袋を必ず着用する、

できれば現場ごとに安全作業マニュアルを作成すべきである。

病院などの滅菌作業が行われる職場では、SARS(重症急性呼吸器症候群)などに代表される新興感染症や院内感染症の課題を抱えるため、より安全な滅菌作業の確立が求められている。今回の調査結果を参考にして、できれば現場ごとにEto滅菌作業における安全作業マニュアルを作成すべきである。

 気密に保たれた滅菌内缶に滅菌物を入れ、これに気化された酸化エチレンガスを加温、加湿して導入を行い、一定時間の滅菌の後、排気ガス、空気清浄(エアレーション)が行われるようになっている。滅菌条件は、温度38~60℃、湿度はおおよそ50%RH、ガス濃度450~1000mg/Lであり、作用時間はガス濃度によって適宜決められている。酸化エチレンガスによる滅菌に必要な時間は2~4時間であり、また滅菌後のエアレーションには温度条件により8~12時間もの長時間がかかる難点がある。酸化エチレンガス滅菌法評価の指標菌にはBacillus atrophaeus DSM2277(以前はBacillus subtilis DSM2277)を用いる。

<Manufacturer>

サクラ精機、三浦工業㈱(MIURA CO., LTD)、㈱エルクコーポレション、ゲティンゲ・ジャパン㈱、(Geting Japan K.K.) 他、多数

2)過酸化水素ガス滅菌

 ガス状の過酸化水素は食品産業に包装材の滅菌、医薬品、医約品用ボトルの滅菌に使われている。30%程度の高濃度過酸化水素を霧状またはガス状にして利用しているが、過酸化水素は酸化エチレンに比べ低濃度で殺菌効果があり、数ppm程度、温度は25~40℃程度の温度で殺菌が可能である。この方法におけるB. stearothermophilusに対するD値は0.17分(2mg/L,35℃)との報告がある。D値は対象菌を1桁(1 long)低下させるのに要する時間を示す。

<Manufacturer>

㈱エアレックス、テクニプラスト・ジャパン㈱(Tecniplast Japan Co. Ltd.)他、多数

3)過酸化水素ガスプラズマ滅菌

 プラズマ滅菌は毒性がないこと、排ガス処理が不要なこと、据付けが容易であること(電源のみで稼働)、滅菌時間が短いこと(滅菌時間が機種容量によって異なるが、最大容量200リットルで60~75分)が利点である。しかし、滅菌不適物があること(特に液体、セルロース)、狭腔構造物の滅菌はブースターを使用するなど注意が必要なこと、プラズマ滅菌不能器具があること(プラズマ滅菌では器具が傷む。しかし、現在、その機種数は極めて少なくなっている)、缶体容量が小さいこと(200,100,50Lの3種類)などが欠点である。従って、冷滅菌法としては、酸化エチレンガス滅菌装置とプラズマ滅菌装置が、それぞれの長所を生かして、また欠点を克服しながら当分の間共存することが予想される。ただし、酸化エチレンガス滅菌装置は発がん性などのためにごく近い将来、強い規制が国からかかることになるであろう。現在、その規制をどのようなものにするか検討が進んでいる。

4)ホルマリンガス滅菌

 ホルマリンはホルムアルデヒド35~38%(およびメタノール10~15%)を含む水溶液で、細菌やウイルスなどに有効であるが、皮膚、粘膜(眼、鼻、咽喉など)に対する毒性が強い。古くは、ホルマリンガスとして室内の消毒に使用されたが、アメリカでは「ホルムアルデヒドは強力な発がん物質として取り扱う」とのガイドラインが出され、現在では「病室内で消毒薬を噴霧しないこと」が一般的で、毒性の面から消毒薬の室内噴霧は止めるべきである。D値が大きいことも欠点の一つである。

5)過熱蒸気滅菌

 過熱水蒸気は分粒体の食材の高温短時間滅菌に使われる。香辛料の殺菌で成功してから、糖質を高含有する物質以外の緑茶、お茶の加工品や機能性を持った天然原材料は、ミクロンオーダーの微粉まで殺菌できる。

<Manufacturer>

大川原製作所、カワサキ機工、Q-Lab

6)オゾン滅菌

  オゾンは強力な酸化剤であり、その酸化力により細菌やウイルスなどを殺滅・不活化し1)、脱臭効果も示す。従来法である塩素系薬剤、ホルマリン、酸化エチレンガスなどは残留毒性や副生成物による環境負荷の弊害があるため、近年、最後は酸化に戻るオゾンガスを室内における燻蒸消毒や脱臭に使うことが多くなっている。オゾンガスの消毒効果はメスチリン耐性菌(MRSA)、緑膿菌などでは多くのデータが公表されているが、ウイルスに関するデータは少ない。代わりに表1にウイルスに対するオゾン水の効果を示す。水中ではあるがオゾンは他の滅菌法に比べウイルスに対して極めて強い滅菌力を示している。オゾンガスとオゾン水の殺菌効果はオゾン濃度(C)と接触時間(T)の積CT値で示される。オゾンガスの場合はその他に湿度や温度の影響を大きく受ける。相対湿度50%以下では殺菌効果は極めて低く、湿度80%以上では高くなる。

 オゾン法を応用した滅菌機械は日本の薬事法医療用具製造承認を、オゾン水は1995年12月に、オゾンガスは1996年3月に取得した。オゾンガスは酸素にに戻るので回収は必須ではなく、活性炭や金属酸化物で自動的に処理できることが大きな利点である。